農地の固定資産税の算出方法と手続き(前編)

農地の固定資産税の算出方法と手続き(前編)

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農地の固定資産税の算出方法と手続き(前編)

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目次

農地を所有されている方は、毎年固定資産税を払われているかと思います。
しかし、固定資産税という制度は複雑な面も多く、固定資産税について完全に理解されているという方は多くはないのではないでしょうか。
そこで、今回は農地に対する固定資産税の算定方法や手続きなどについて解説していきたいと思います。


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固定資産税とは


農地の固定資産税について考える前に、そもそも固定資産税とはどういう税制であるかについてみていきます。
総務省によると固定資産税とは、


「固定資産(土地、家屋及び償却資産)の保有と市町村が提供する行政サービスとの間に存在する受益関係に着目し、応益原則に基づき、資産価値に応じて、所有者に対し課税する財産税。」


と定義されています。


すなわち、固定資産税とは、
土地や建物などの固定資産の所有者は、
その固定資産が存在する市町村が提供する行政サービス
による利益を得ている
という前提のもと、
利益を得ている固定資産の所有者に対して
得ている利益に応じた負担を求めるという観点から課税する税金です。


また、固定資産はどの市町村にも幅広く存在するという特徴から、
固定資産税は市町村が課税することとなっています(東京都23区内では東京都が課税)。
課税額についてですが、一定の価値の固定資産を持つという事実から所有者の耐えうる税負担を判断するため、所有する資産額に応じた課税がなされています。


そのため、基本的には固定資産の評価額から導かれる課税標準額に税率(標準税率1.4%)をかけた額が課税額となります。


固定資産税=課税標準額(課税標準額が30万円未満の場合は0) × 税率(1.4%)

※ただし、課税標準額(固定資産の評価額に対して調整を加えた額)が
一定額(土地の場合は30万円)を下回る場合には課税されません。


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農地の固定資産税算定


次に、農地の固定資産税の算定方法についてみていきます。


まず、一般的に固定資産税の課税額は、課税標準額×1.4%です。そこで、特定の土地の固定資産税を求める際には、土地それぞれの課税標準額を求める必要があります。この課税標準額は固定資産の評価額をもとに算出されるため、土地がどのように評価されるのかという点が重要となります。


この評価額は、大まかにいうと、同様の土地が売買された実際の値段を基準に様々な調整を加えて決定されます。この値段を判断するにあたっては、農地や宅地という地目により基準が異なるのはもちろん、農地の中でも以下の4種類に分れた資産評価が行われます。
①一般農地
②一般市街化区域農地
③特定市街化区域農地
④転用の手続きを行った農地


ただし、その年度での売買実例価格をもとにした評価による場合、事情の変化から急激な固定資産税の上昇を招く可能性もあります。
そこで、土地における課税の場合には、「その年度の土地の課税標準額×税率」(本則税額)と地目に合わせた負担調整措置(調整税額)の低い方が実際に課税される額となります。


ケース1 本則税額<調整税額の場合、本則税額が課税される。
ケース2 調整税額<本則税額の場合、調整税額が課税される。

以下では、農地の課税額の計算方法について、農地の区分別に検討していきます。


①一般農地

一般農地とは、都市計画区域外の農地や、都市計画区域内の農地のうち調整区域にある農地及び生産緑地の指定を受けた農地といった、農村部にある農地や、都市部にあっても長期の営農を行う農地がほとんどです。


このような土地に関しては、あくまで農地としての利用を前提とした売買における実例価格をもとにして当該土地の売買価格を決定します。すなわち、近隣で転用の期待を含んだ農地の売買があったとしても、その売買額は評価額に対して影響しないのです。


さらに、一般農地においては、農業の収益性の低さから売買における価格とその土地の持つ収益性が必ずしも一致しないため、評価の際には、同様の土地の実例価格に1年で当該土地から期待される利益の割合(限界収益修正率)である0.55をかけ、さらに諸条件の調整を加えたものが評価額となります。


また、一般農地の調整税額は、「前年度の課税標準額×負担調整率×税率」で求められます。


一般農地の調整税額=前年度の課税標準額×負担調整率× 税率(1.4%)

ここでいう負担調整率は、下表のとおりです。


負担水準の区分負担調整率
(a) 0.9以上のもの1.025
(b) 0.8以上0.9未満のもの1.05
(c) 0.7以上0.8未満のもの 1.075
(d) 0.7未満のもの 1.1
※負担水準(一般農地) =前年度の課税標準額/当該年度の評価額


◆計算例
所有する農地と同等の農地(農地の間での調整なし)の売買価格が前年度は1㎡あたり80円、本年度は100円の一般農地を1ha(10000㎡)所有している場合。

(1)本則税額
本年度の売買価格は100円×10,000㎡=1,000,000円
農地の評価額は1,000,000円×0.55=550,000円
別段の調整はないから、課税標準額は550,000円
本則税額では課税額=課税標準額×税率だから、
550,000円×1.4%=7700円

(2)調整税額
前年度の売買価格は80円×10,000㎡=800,000円
前年度の農地の評価額、課税標準額は800,000円×0.55=440,000円
負担水準=440,000/550,000=0.8
したがって負担調整率は1.05
調整税額では課税額=前年度の課税標準額×負担調整率×税率だから、
440,000円×1.05×1.4%=6468円

(1)(2)の課税額を比較すると(2)のほうが安いため、固定資産税は6468円


②一般市街化区域農地

一般市街化区域農地とは、③で説明する特定市街化区域農地以外の、市街化区域内の農地です。この農地は農地を宅地化していくことが前提となる区域である市街化区域にあることから、現在は農地であっても将来的には宅地に転用される可能性が高い土地であると言えます。


そこで、資産価値の評価は宅地並みの基準が用いられます。この「宅地並み」というのは必ずしも宅地と全く同様の評価というものではなく、同様と認められる宅地の売買価格から農地を宅地に造成するのにかかる費用を引いたものになります。


宅地並み農地評価額=同様と認められる宅地の売買価格 - 農地を宅地造成にかかる費用


ただし、前述の通り農業の収益性の低さという問題があるため、
一般市街化区域農地については現に営農している場合に限り、課税標準額が評価額の1/3になります。


一方、負担調整措置については、農地に準じた課税がなされるため、一般農地における負担調整措置と同様の計算を行います。


◆計算例
所有する現に耕作を行っている農地と同等の宅地の売買価格が、前年度は1㎡あたり20000円、本年度は25000円の一般市街化区域農地を1ha(10000㎡)所有している場合。
ただし、宅地造成には整地・地盤改良・5000㎥の土盛り・150㎡の土留めが必要であるとする。また、それぞれの1㎡、1㎥あたりの必要費用は、整地500円、地盤改良1400円、土盛り5100円、土留め58600円とする(宮城県の基準より)。

(1)本則税額
本年度の売買価格は25,000円×10,000㎡=250,000,000円
この1haの農地を宅地化するためにかかる費用は、
整地費+地盤改良費+土盛費+土留費であるから、
500×10,000+1,400×10,000+5,100×5,000+58,600×150=53,290,000円
したがって評価額は250,000,000円-53,290,000円=196,710,000円
現に耕作している農地であるから、課税標準額は評価額の1/3となり、約65,570,000円
本則税額では課税額=課税標準額×税率だから、
65,570,000円×1.4%=917,980円

(2)調整税額
前年度の売買価格は20,000円×10,000㎡=200,000,000円
この1haの農地を宅地化するためにかかる費用は、
整地費+地盤改良費+土盛費+土留費であるから、
500×10,000+1,400×10,000+5,100×5,000+58,600×150=53,290,000円
したがって評価額は200,000,000円-53,290,000円=146,710,000円
現に耕作している農地であるから、課税標準額は評価額の1/3となり、約48,900,000円
負担水準=48,900,000/65,570,000≒0.75
したがって負担調整率は1.075
調整税額では課税額=前年度の課税標準額×負担調整率×税率だから、
48,900,000円×1.075×1.4%=735,945円

(1)(2)の課税額を比較すると(2)のほうが安いため、固定資産税は735,945円


③特定市街化区域農地

特定市街化区域農地とは、三大都市圏の中の特定の市の市街化区域農地を指します。
特定市街化区域農地は一般市街化区域農地よりもさらに宅地化の可能性が高いため、より宅地に近い課税がなされます。


具体的には、土地の評価が宅地並み評価であることはもちろん、現に耕作している農地について課税標準額が評価額の1/3になるという点については変わりませんが、負担調整措置については宅地と同様の負担軽減措置である「課税額=(前年度の課税標準額+ 当該年度の評価額× 1/3×5%)×税率」となります。


また、新たに特定市街化区域農地になった農地については、軽減率という緩和措置がとられ、特定市街化区域になってから4年間、本則税額を計算する際に一定の減額がなされます。


◆計算例
所有する現に耕作を行っている農地と同等の宅地の売買価格が前年度は1㎡あたり45000円、本年度は50000円の特定市街化区域農地を1ha(10000㎡)所有している場合。
ただし、宅地造成には整地・地盤改良・5000㎥の土盛り・150㎡の土留めが必要であるとする。また、それぞれの1㎡、1㎥あたりの必要費用は、整地600円、地盤改良1,400円、土盛り4,700円、土留め55,500円とする(東京都の基準より)。

(1)本則税額
本年度の売買価格は50,000円×10,000㎡=500,000,000円
この1haの農地を宅地化するためにかかる費用は、
整地費+地盤改良費+土盛費+土留費であるから、
600×10,000+1,400×10,000+4,700×5,000+55,500×150=35,375,000円
したがって評価額は500,000,000円-35,375,000円=464,625,000円
現に耕作している農地であるから、課税標準額は評価額の1/3となり、約154,875,000円
本則税額では課税額=課税標準額×税率だから、
154,875,000円×1.4%=2,168,250円

(2)調整税額
前年度の売買価格は45,000円×10,000㎡=450,000,000円
この1haの農地を宅地化するためにかかる費用は、
整地費+地盤改良費+土盛費+土留費であるから、
600×10,000+1,400×10,000+4,700×5,000+55,500×150=35,375,000円
したがって評価額は450,000,000円-35,375,000円=414,625,000円
現に耕作している農地であるから、課税標準額は評価額の1/3となり、約138,210,000円
調整税額は課税額=(前年度の課税標準額+ 当該年度の評価額× 1/3×5%)×税率だから、
(414,625,000円+464,625,000円×1/3×5%)×1.4%=5,913,162.5円

(1)(2)の課税額を比較すると(1)のほうが安いため、固定資産税は2,168,250円


④転用の手続きを行った農地

農地を宅地に転用する際には、市街化区域内の農地であれば転用の届出、市街化調整区域の農地であれば転用許可を受けることになりますが、この転用の許可や届出を受けた段階で当該土地は純粋な農地ではなく介在農地雑種地としての扱いを受けることになります。


そのため、一般農地は①と異なり宅地並み評価を受けることとなり、市街化区域内の農地は②や③で受けていた課税標準額を評価額の1/3に減免する特例措置を受けることができなくなります。そのため、転用の手続きをした農地は固定資産税が大きく上昇することになります。


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