納税猶予

今回は、農地と納税猶予というテーマについてお話したいと思います。
農地の相続税・贈与税に関する重要な特例として、納税猶予があります。

この制度を用いると、相続税・贈与税の納付が一定条件の下で猶予されます。
農地等の贈与・相続には多くの税金を支払う必要が出てきてしまいますが、
この制度を上手く用いることができれば、納税額を大きく減らすことができます。
この納税猶予制度について、今後の動向も含めてご紹介したいと思います。

目次

※前編では1~3について解説します。後編はこちら(4~7をご紹介します。)
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1.贈与税の納税猶予の要件

農地等を、農業を引き継ぐ推定相続人に贈与した場合に、贈与を受けた農地等について納税猶予がなされる要件には、

①贈与者の要件 ②受贈者の要件 ③特例農地等

以上の3つの要件があります。

①贈与者の要件

贈与の日まで3年以上引き続いて農業を営んでいた個人で、
次のイ~ハに該当しない人である必要があります。

イ)贈与をした日の属する年(「対象年」といいます。)の前年以前において、
推定相続人に対し相続時精算課税を適用する農地等の贈与をしている場合。

ロ)対象年において、今回の贈与以外に農地等の贈与をしている場合。

ハ)過去に農地等の贈与税の納税猶予の特例に係る一括贈与をしている場合。

※イの相続時精算課税とは、生前贈与をした場合、贈与財産には贈与税がかかりませんが、その代わりに相続のときには、生前に贈与された財産と相続された財産を足した額に相続税がかかるという制度です。

イ~ハの条件がありますが、原則として贈与の日まで3年以上農業を営んでいる個人であると贈与者として認められます。

②受贈者の要件

贈与者の推定相続人のうちの1人で、次のイ~ニの全てに該当するものとして農業委員会が証明した個人であることが必要です。

イ)贈与を受けた日において、年齢が18歳以上であること。

ロ)贈与を受けた日まで引き続き3年以上農業に従事していたこと。

ハ)贈与を受けた後、速やかにその農地及び採草放牧地によって農業経営を行うこと。

二)農業委員会の証明の時において認定農業者等であること。

上記のニについては、平成28年度の税制改正により追加された要件ですので注意が必要です。
ここでいう「認定農業者」とは、効率的かつ安定的な農業経営の基準として農林水産大臣が定めるもの(農林水産省告示第897号参照)で、

農業経営基盤強化促進法の規定による、

①農業経営改善計画の認定を受けていること
②青年等就農計画の認定を受けていること
③市町村が定めた基本構想の指標を充たしていること

以上の3つの基準の内のいずれかを満たす必要があります。

③特例農地等の要件

贈与者の農業の用に供している農地等のうち

㋐「農地の全部」
㋑「採草放牧地の3分の2以上の面積のもの」
㋒「準農地の3分の2以上の面積のもの」

について一括して贈与を受けることが必要になります。

ここで注目すべきは、㋐の農地には、生産緑地(生産緑地とは?- 概要まとめ –参照)も含まれていることです。

以前は、生産緑地に指定するための要件として当該土地の面積が500㎡以上あることが定められていましたが、平成29年改正でこの面積要件を緩和し(生産緑地法3条2項)され、市町村が一定の基準(300㎡)のもと面積要件を条例で変更できるようになりました。

この改正により、東京23区を含めた都市圏でより多くの農地が特例農地等に含まれ得ることになります。
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2.贈与税の納税猶予の手続

この特例の適用を受けるためには、贈与税の申告書に一定の書類を添付して、
提出期間内(原則、受贈者が、贈与された年の翌年の2月1日から3月15日まで。)に提出するとともに、農地等納税猶予税額及び利子税の額に見合う担保を提供する必要があります。

この特例の適用を受けた人は、納税猶予の期限が確定するまで又は納税が免除されるまでの間、贈与税の申告期限から3年ごとに、「継続届出書」を提出しなければなりません。

3.贈与税の納税猶予の打切り事由

納税猶予を受けたのちに、次のイ~トに該当した場合は、
その贈与税額の全部又は一部を納付しなければなりません。

イ)贈与を受けた農地等について、譲渡等があった場合。

ロ)贈与を受けた農地等に係る農業経営を廃止した場合。

ハ)受贈者が贈与者の推定相続人に該当しないこととなった場合。

)継続届出書の提出がなかった場合。

ホ)担保価値が減少したことなどにより、増担保又は担保の変更を求められた場合で、
その求めに応じなかった場合。

へ)都市営農農地等について生産緑地法の規定による買取りの申出があった場合や、
都市計画の変更等により特例農地等が特定市街化区域農地等に該当する場合。

ト)準農地について、この特例の適用を受けた場合で、
申告期限後10年を経過する日までに、農業の用に供されていない準農地がある場合。

前編はこれにて終わりです。
農地等の贈与税に対する納税猶予へのご理解が深まったのではないでしょうか。

後編では農地等の相続税の納税猶予について解説します。
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