農地転用
9月4日付の日本農業新聞は1面で、政府が優良農地についても転用規制の例外を拡大すると報じました。日本農業新聞によれば、政府は通常国会で改正農村地域工業等導入促進法地域未来投資促進法を成立させたうえで、農地法や農振法の政令を改正し、これらの法律を自治体が運用する際のルールを定めた基本方針をまとめたようです。

そこで、今回はこの農地の転用規制の緩和について解説していきたいと思います。

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1.改正の概要

今回の法改正は、優良農地の農地転用が例外的に許可される範囲を企業用地への転用において拡大するものです。
市町村が定める優良農地である農用地区域内農地や10ha以上のまとまった農地である第一種農地は農業生産上の価値が特に高いことから、原則として転用が許可されていません。

この規制の例外の一つとして、これまでは農村地域工業等導入促進法により、農村地域の中で自治体が定めた区域については工業等の5業種の企業用地に転用することが認められてきました。

しかし、今回の改正により、例外として転用が許可される範囲が拡大されます。農村地域においては業種の制限が撤廃され、また農村地域以外においても、地域未来投資促進法に基づく計画を自治体が策定することで農振地域内の農地が企業用地として転用される可能性があります。

以下では、今回の改正に関連する法律について個別に解説していきます。

2.農地法・農振法について

まずは、農地の転用について規制している農地法農振法について解説します。

農地法の目的は、農地が貴重な資源であることから「農地を農地以外のものにすることを規制」するとともに、「耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図る」ことで、「国民に対する食料の安定供給の確保に資すること」にあります。

また、農振法が規定する農業振興地域制度の目的は、「総合的に農業の振興を図ることが必要であると認められる地域」に対して、計画的な整備のための施策・措置を行うことで、「農業の健全な発展を図るとともに、国土資源の合理的な利用に寄与することを目的とする」とされています。

すなわち、農地法・農振法は農業生産に必要不可欠な農地を食料の安定供給や農業の発展という目的のもと保護するための法律であるといえます。

このような趣旨のもと、農地法は原則として転用には都道府県知事等の許可が必要であると、また農振法は、都道府県知事が定める農業振興地域の中で、指定の用途以外での転用が原則として許可されない農用地区域を市町村が定めるとしています。

この農用地区域以外でも、市街化調整区域内の土地改良事業等の対象となった農地(8年以内)等、特に良好な営農条件を備えている農地である甲種農地10ヘクタール以上の規模の一団の農地、土地改良事業等の対象となった農地等良好な営農条件を備えている農地である第1種農地においても、原則として転用は許可されないとしています。

転用条件の詳細についてはこちらの記事「農地転用とは – 概要まとめ」をご覧ください。

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3.農村産業法
(改正農村地域工業等導入促進法)

農村地域工業等導入促進法とは、そもそもは高度成長期において、農業と工業の均衡ある発展を図るとの要請から、農村地域における工業の立地を促進し、新たな雇用を創出するものとして制定された法律でした。制定当時に産業の中でも工業等が対象となっていたのは、これらの法律が特に農村地域における雇用吸収力が高いと判断されたためであるようです。

改正前の農村地域工業等導入促進法では、市町村が定めた実施計画で工業等導入地区とされた区域について、工業(製造業)、道路貨物運送業、倉庫業、こん包業、卸売業の5業種について農地法の転用許可の特例、農振法の農用地区域からの除外の特例を認めていました。

すなわち、農村地域工業等導入促進法に基づく実施計画において工業等導入地区とされた区域の農地は、原則として転用が許可されない第1種農地であっても転用が許可されます。また、本来農用地区域内の農地であった場合でも、農用地区域内農地として扱われず、通常の農地と同様の手続きによって転用をすることができます。

なお、これらの例外事項にあてはまる場合であっても、都道府県知事の許可を得ることなく農地転用をすることはできません。また、ここでいう農村地域の定義は農村地域への産業の導入の促進等に関する法律施行令に定められています。

大まかにまとめると、三大都市圏の都市部と人口20万以上の市町村以外の、農業振興地域・山村振興法の振興山村・過疎地域自立促進特別措置法の過疎地域を含む市町村が、農村地域としてこの制度を利用することができます。

この制度に対し、人口の状況や社会構造の変化などから工業以外の業種のための転用についても認めてほしいという要望が生じるようになりました。実際、工場用地を作ったものの遊休化してしまっている土地も一定の割合で見受けられていました。

そこで、政府は平成27年には遊休化した工場用地に工業以外の利用を許可する特例を認めました。その結果を踏まえて政府は工業以外での利用を全国で認めることになりました。この「工業以外の利用」の想定される例としては、

・農産物直売所等の小売業
・農泊、農家レストラン等の宿泊業・飲食サービス業
・木質バイオマス発電
・医療・福祉
・情報通信業

等が挙げられています。これに伴い、個人が実施計画で定める産業用地に供するものとして農用地等を譲渡した場合の所得税の軽減(800万円を上限とする特別控除)や、日本政策金融公庫による低利融資といった税制・金融支援についても対象業種が拡大されます。

加えて、特に農山漁村の地域資源を活用する施設(農泊、農家レストラン等)や導入産業への円滑な就業に必要な施設(研修施設等)は農山漁村振興交付金の対象となり、また地方創生交付金についても審査時に配慮がなされるとされています。

ただし、あくまでこの法律の目的は農村地域における雇用の創出にあるため、この法律の適用範囲は農村地域にとどまり、都市部においては以前と同様、この制度を利用することはできません。また、企業用地以外の用途(一般の宅地等)は認められていません。

さらに、基盤整備して8年以内の農地など特に優良な農地である甲種農地はこの対象とならないとされています。

加えて、市町村が実施計画を定める前提となる国の基本方針には、農業生産力の確保という観点から工業団地や生産が不可能な荒廃農地を優先して工業等導入地区とすること、農地中間管理機構が借り受けて基盤整備を行うこととなっている農地は対象としないことが求められています。

4.地域未来投資促進法

地域未来投資促進法とは、地域の成長産業に対しての投資を通して地域経済の成長を図るための法律です。現在、観光、農林水産、成長ものづくり分野など、地域の特性を生かしながら成長性の高い新たな分野に挑戦する取組が登場しつつあります。

こうした取組を全国津々浦々で活発にしていくことで、地域経済における稼ぐ力の好循環が実現されることを意図した法律になっています。

この法律は地域経済を支える企業に対してヒト・モノ・カネ・情報・規制の特例といった幅広い支援を行い、設備投資を促すものですが、今回の記事に関連するのは、この中でも土地利用の規制の特例についての規定です。

地域未来投資促進法17条には、「国の行政機関の長又は都道府県知事は」、この法律を利用した事業の中で土地利用調整計画に適合するものを実施するために、農地法等の法律の規定による許可その他の処分を求められたときは、当該地域の施設の整備が円滑に行われるよう「適切な配慮をするものとする」と規定されております。

すなわち、この事業を用いて転用の申請をすることで、転用の許可がされやすくなるといえます。

また、この法律は「地域経済」の強化を目的としていることから、農村地域に限らず、都市部においてもこの法律は適用されます。
ただし、あくまでなされるのは「適切な配慮」であるため、許可権者に対して配慮を求めることは可能ですが、転用を許可させることに対する強制力は働かないと考えられます。

5.まとめ

①原則として農地転用が許可されない第1種農地・農用地区域内農地(甲種農地)であっても、農村産業法にもとづいて市町村が定める計画に当該農地が含まれている場合には、農地を転用し企業用地にする許可を得ることができる。

②地域未来投資促進法にもとづく計画に当該農地が含まれている場合には、転用の際に計画の障害にならないようにするという特別の配慮がなされる。

今回の制度改正により、農地の管理に困った場合に、企業に対して土地を譲り渡すという事例が増加すると考えられます。農地について定める計画が増えるため、農地所有者はさらに市町村の動向を確認しなければならなくなりそうです。

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