特定生産緑地とは?生産緑地法改正、3つの特徴

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特定生産緑地とは?生産緑地法改正、3つの特徴

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生産緑地法改正について


目次

平成29年2月10日、「都市緑地法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。この法案は生産緑地法も対象としており、大きな改正が見込まれます。


そこで今回は、当社のセミナー参加者からも知りたいという声が多い、生産緑地法改正の方向性についてご紹介したいと思います。


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改正の背景


国土交通省は今回の改正案の提出の背景について、


”「公園、緑地等のオープンスペースは、良好な景観や環境、にぎわいの創出等、潤いのある豊かな都市をつくる上で欠かせないものです。また、災害時の避難地としての役割も担っています。都市内の農地も、近年、住民が身近に自然に親しめる空間として評価が高まっています。
 このように、様々な役割を担っている都市の緑空間を、民間の知恵や活力をできる限り活かしながら保全・活用していくため、関係法律を一括して改正し、必要な施策を総合的に講じます。」”

と説明しています。( http://www.mlit.go.jp/report/press/toshi07_hh_000104.html )


ここから読み取れる重要な点は、


①都市内の農地の評価の高まり
②農地を含め都市の緑空間を保全していく
③保全には民間を活用


の三点です。


国としては、都市の農地について自然とのふれあいやコミュニティづくり、防災など多くの機能を期待しています。


ただ、これらの機能は必ずしも直接に大きな収益に結びつくとは限りません。そのため、マンションなどを用いてより大きな収益を得ようと農地を転用し宅地として利用する方も多いのが現状です。


そこで国は、生産緑地を増やすことで転用されずに維持される農地を増やしたいと考え、生産緑地の要件や生産緑地内の施設の制限を緩和して、生産緑地のメリットである”所有者に対する税の優遇”を受けやすくしています。


それと同時に、生産緑地解除のための買取りの申出を延期させることができる制度を導入し、行為制限を受ける土地の減少を防ごうとしています。

また、都市農地の維持・保全にかかわる主体として、国や自治体のみならず、民間の力も活かしたいとしています。


民間企業が都市の農地を活用していくことで、都市農地の利用法についての新たなソリューションが提供されたり、税金に頼らない都市農地維持の仕組みづくりが実現されることを期待しているのです。


”生産緑地内の施設の制限緩和”は、こうした点も踏まえて考えられたものだと思われます。



生産緑地の面積要件の緩和


現行法の下では、生産緑地に指定するための要件として当該土地の面積が500㎡以上あることが定められています。この500㎡以上という要件は都市部の農地としては広いものです。


そこで改正案では、この面積要件を緩和しようとしています。具体的には、生産緑地法3条2項が追加され、市町村が一定の基準(300㎡)のもと面積要件を条例で変更できるようにするという改正が予定されています。


面積要件が300㎡以上となった場合、東京23区内においてみると、7~8割の農地について生産緑地制度が適用される可能性があります。


改正生産緑地法第3条第2項

市町村は、公園、緑地その他の公共空地の整備の状況及び土地利用の状況を勘案して必要があると認めるときは、前項第二号の規定にかかわらず、政令で定める基準に従い、条例で、区域の規模に関する条件を別に定めることができる。


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生産緑地内の施設の制限緩和


生産緑地にレストラン


現行法のもとでは、生産緑地内に設置できるのは生産・集荷・貯蔵・保管・処理・休憩に用いる施設のみであり、所有者自身が作物を作る以外で収益を得ることが難しい状況にあります。


それに対し、改正案では地元の農産物等を用いた商品の製造・加工・販売や、地元の農産物を用いたレストランのための施設を設置することができるようになります。


この改正の背景には、生産緑地の収益化をしやすくすることで生産緑地の維持を図るという意図があると思われます。


ただし、製造・加工・販売などの施設の敷地は宅地となり、税制の面で不利益があります。


具体的には、固定資産税の評価額が”当該生産緑地内の農地等の価額を基準として求めた価額+農地から転用する場合において通常必要とされる造成費相当額”となり、また施設敷地の面積分は納税猶予の対象外になります。


そのため、税負担と収益の関係で思ったよりも施設設置が広まらない可能性もあります。


こういった税制面での懸念点もありますが、土地活用の幅が広まったことには間違いなく、生産緑地を維持する際の有力な選択肢になりえるでしょう。


改正生産緑地法第8条第2項第二号

次に掲げる施設で、当該生産緑地の保全に著しい支障を及ぼすおそれがなく、かつ、当該生産緑地における農林漁業の安定的な継続に資するものとして国土交通省令で定める基準に適合するもの

イ,当該生産緑地地区及びその周辺の地域内において生産された農産物等を主たる原材料として使用する製造又は加工の用に供する施設
ロ,イの農産物等又はこれを主たる原材料として製造され、若しくは加工された物品の販売の用に供する施設
ハ,イの農産物等を主たる材料とする料理の提供の用に供する施設



特定生産緑地制度の導入


土地が生産緑地に指定されてから30年が経過すると、所有者は市町村に対して買取りの申出をすることができます。


所有者が買取りの申出をすると、市町村が当該土地を買い取るか、農業者に当該土地をあっせんし、それができない場合は土地に対する行為制限が解除されます。


ただし、実際には市町村が土地を買い取ることはほとんどありません。結果として、生産緑地指定から30年が経過するとその農地の多くが解除され、宅地に転用されます。


そして、2022年には現行の生産緑地法が施行されてから30年を迎え、多くの生産緑地が解除されることが予想されています。(「2022年問題」と呼ばれています)


すると、多くの農地が一気に転用され、農地の面積が急激に減少する一方、宅地の供給が過剰になってしまう可能性があります。

そういった背景もあり、改正案では生産緑地指定から30年経過が近づいた農地について、農地として保全することが良好な都市環境のために有効であるものを市町村が特定生産緑地として指定し、買取りの申出をすることができる時期を10年間先送りにするという制度が盛り込まれました。


すなわち、指定から30年が経過した生産緑地は10年ごとに更新されることになります。これにより、30年経過後の買取りの申出を減少させ、農地保護機能を強化することを意図しています。


一方、所有者にとっては、買取りの申出までの期間が延長される結果、固定資産税の減額の効果も延長されます。


ただし、特定生産緑地指定に関して事前に意見を述べる場は用意されているものの、特定生産緑地指定の決定権者は市町村であり、場合によっては不本意な延長を余儀なくされるおそれがあります。


所有者としては、所有する生産緑地をどう扱っていくかという点に関し、30年経過が近づく前に、当該農地についてどのように扱うべきか検討していく必要があります。


改正生産緑地法第10条の2
1項
市町村長は、申出基準日が近く到来することとなる生産緑地のうち、その周辺の地域における公園、緑地その他の公共空地の整備の状況及び土地利用の状況を勘案して、当該申出基準日以後においてもその保全を確実に行うことが良好な都市環境の形成を図る上で特に有効であると認められるものを、特定生産緑地として指定することができる。
2項
前項の規定による指定(以下単に「指定」という。)は、申出基準日までに行うものとし、その指定の期限は、当該申出基準日から起算して十年を経過する日とする。
(以下略)



まとめ


以上の改正点の要点を表にまとめました。


 
現行法
改正案
面積要件
500㎡以上
条例により300㎡以上で可
設置可能施設
直接に農業に関する施設
加工・販売・レストランも可
30年経過後
自由に買取り申出⇒行為制限解除
市町村が重要な生産緑地を特定生産緑地に指定⇒10年間行為制限が延長


このように、生産緑地法は対象を広げる方向での改正がなされようとしています。


生産緑地制度は税制の面で農地所有者を優遇する一方、制限の多さから不満をもたらすことも多くありました。


この点、今回の改正案は制度を使いやすくするものであり、その不満を多少なりとも解決するものになるかと考えられます。


なお、改正案には盛り込まれていないものの、中間とりまとめ段階で議論されていた施策として、農業従事希望者への賃貸に対する納税猶予の適用範囲の拡大、農業者の事故の際の農地保全のための仕組みづくり、宅地から農地への転換などがあります。


特に、農業従事を希望する者への生産緑地の賃貸に納税猶予を適用するかについては今後の税制改正で検討するとされています。


※2018/06/21 追記

生産緑地の賃借をしても納税猶予を適用する、都市農地の賃借の円滑化に関する法律が6月20日に全会一致で可決・成立いたしました。


生産緑地法については今後も改正がなされる可能性があります。現在の法制・税制への理解を進めると同時に今後の議論の動向についても注意を払う必要があるでしょう。


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