農地相続時に優遇措置を受けるには?相続税制度と農地相続

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農地相続時に優遇措置を受けるには?相続税制度と農地相続

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目次

皆様は、農地を相続する際に必要な措置や条件など、ご存知でしょうか?


相続税は日常の生活になじみがない一方、急に多額の税が課されてしまうこともあり得る税金です。まずはこの記事で相続税について学び、大切な農地や財産を適切に引き継ぐことができるような準備をしておきましょう。


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相続税概論


まず、相続税の仕組みについて簡単に確認します。


そもそも相続税とは、亡くなられた方からの相続などによって個人が財産を取得した際にその財産に対してかかる税金です。


ただし、財産を相続した人すべてが相続税を収めなければならないというわけではなく、残された財産から残された債務や葬式費用の額を差し引いたうえで、相続額が基礎控除額を上回る場合にのみ相続税の申告義務・納税義務が発生します。


この基礎控除額は「基礎控除額=3000万円+(600万円×人数分)」で求められます。なお、この申告は10か月以内に行わなくてはなりません。


(例1)残された財産1億2000万円、残債務200万円、葬式費用400万円を被相続人の配偶者Aと子B、C、Dが相続する場合

正味の遺産額:残された財産1億3000万円-(残債務200万円+葬式費用400万円)=1億1400万円
基礎控除額:3000万+(600万円×4人)=5400万円
課税遺産価格:1億1400万円-5400万円=6000万円


課税遺産がある場合はその額を法定相続分に従って配分し、相続人それぞれについて相続税額を計算します。


法定相続分とは、民法が定める遺産の取得割合のことです。この割合はあくまで原則であり、遺言や相続人間の話し合いによって変更することができます。


また、相続税額の税率は課税遺産の価格によって8段階に分かれています。たとえば、課税遺産が1000万円以下なら遺産額の10%、3000万円以下なら遺産額の15%から50万円控除などと、遺産額が大きくなるにつれて税率も高くなります。


なお、配偶者への課税については特例があり、配偶者が実際に相続する正味の遺産額が(1)1億6000万円以下(2)法定相続分以下のいずれかの場合は、相続税の申告書とともに申告すれば相続税が免除されます。


(例2)例1の状況で法定相続分に従って相続する場合

配偶者と子の法定相続分は1:1
→配偶者3000万円、子3000万円

子はB、C、Dの3人であるから、それぞれの相続額は子の法定相続分を3等分
Aの課税遺産は3000万、B・C・Dの課税遺産は1000万円
税率:3000万円以下は15%から50万円控除、1000万円以下は10%
A:3000万円×15%-50万円=400万円
B・C・D:それぞれ1000万円×10%=100万円
よって、法定相続分に従った場合の相続税はAが400万円、B・C・Dが100万円
ただし、配偶者Aは配偶者特例の要件を満たすからAの相続税は0になる。


以上が原則的な場合の相続税の計算方法です。


ただし、遺産の配分割合を変更した場合は、法定相続分にしたがって計算した相続税額の合計から、遺産の配分割合に応じて相続税額を配分します。


すなわち、遺産の分割方法を変更しても、相続税の総額は変わらないことになります。


(例3)例1の状況で、遺産の配分割合をA:B:C:D=3:2:1:1とする場合

法定相続分にしたがって計算した相続税額の合計(例2の合計)は700万円
遺産の配分割合にしたがって相続税額を配分すると、
Aは300万円、Bは200万円、Cは100万円、Dは100万円
ただし、配偶者Aは配偶者特例の要件を満たすからAの相続税は0になる。


以上が相続税を計算する際の大まかな流れです。


以下では、この原則をもとに農地を相続する際に気を付けるべき点について解説していきます。


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農地相続の相続税


農地を相続する際にまず問題となるのは、農地の評価額です。農地の評価額の算定方法は農地の種類によって二つに分かれます。


(1)倍率方式

固定資産税における固定資産評価額を基準にする算定方法です。倍率方式による場合の評価額の計算方法は以下の通りになります。


評価額=固定資産評価額×評価倍率


固定資産評価額は、固定資産税の納税通知書から確認することができます。


また、評価倍率は国税局長が定めており、国税庁のウェブサイトなどで確認することができます。


この方式は純農地、中間農地といった非市街地の農地を中心に適用されます。


(2)宅地比準方式


評価額=(宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額-1㎡当たりの宅地造成費)×地積
宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額=路線価×奥行き価格補正率等


宅地としての評価額を基準にした評価方法です。この評価方法は市街地の農地に適用されます。


市街地の農地は、農業生産の観点での重要性は非市街地と変わらないものの、宅地としての需要が特に高いため、宅地に転用される可能性が高いとされています。


そのため、市街地の農地は宅地の評価額を基準に評価されます。


ここでいう路線価は、当該地域の路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額(千円単位で表示しています。)のことです。


この路線価に、それぞれの土地の条件に応じた補正率を掛け合わせることでその土地の1㎡あたりの評価額を求めることができます。


なお、市街化区域内でも路線価が設定されていない土地は倍率方式の対象となります。


農地の種類
評価方法
純農地(農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地)
倍率方式
中間農地(第2種農地)
倍率方式
市街地周辺農地(第3種農地)
市街地農地とした場合の価額×0.8
市街化区域内の農地(農地法及び農業振興地域の整備に関する法律の適用のない農地)
倍率方式または宅地比準方式


(農地の区分については以前の記事をご覧ください)



農地の納税猶予


農地の相続税に関する重要な特例として、納税猶予があります。この制度を用いると、相続税・贈与税の納付が一定条件の下で猶予されます。


(1)納税猶予の要件

納税猶予の要件は、被相続人・相続人・農地のそれぞれについて存在します。


①被相続人の要件
被相続人は次のいずれかに該当する必要があります。


イ.死亡の日まで農業を営んでいた人
ロ.農地等の生前一括贈与をした人
ハ.死亡の日まで相続税の納税猶予の適用を受けていた農業相続人又は農地等の生前一括贈与の適用を受けていた受贈者で、障害、疾病などの事由により自己の農業の用に供することが困難な状態であるため賃借権等の設定による貸付けをし、税務署長に届出をした人
ニ.死亡の日まで特定貸付けを行っていた人


②農業相続人の要件
相続人の要件は、次のいずれかに該当することです。


イ.相続税の申告期限までに農業経営を開始し、その後も引き続き農業経営を行うと認められる人
ロ.農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受贈者で、特例付加年金又は経営移譲年金の支給を受けるためその推定相続人の1人に対し農地等について使用貸借による権利を設定して、農業経営を移譲し、税務署長に届出をした人(贈与者の死亡の日後も引き続いてその推定相続人が農業経営を行うものに限ります)。
ハ.農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受贈者で、障害、疾病などの事由により自己の農業の用に供することが困難な状態であるため賃借権等の設定による貸付けをし、税務署長に届出をした人(贈与者の死亡後も引き続いて賃借権等の設定による貸付けを行うものに限ります)。
ニ.相続税の申告期限までに特定貸付けを行った人(農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受贈者である場合には、相続税の申告期限において特定貸付けを行っている人)。


③特例農地等の要件
相続税の期限内申告書にこの特例の適用を受ける旨が記載されたものであることと、次のいずれかに該当することが要件となります。


イ.被相続人が農業の用に供していた農地等で相続税の申告期限までに遺産分割されたもの
ロ.被相続人が特定貸付けを行っていた農地又は採草放牧地で相続税の申告期限までに遺産分割されたもの
ハ.被相続人が営農困難時貸付けを行っていた農地等で相続税の申告期限までに遺産分割されたもの
ニ.被相続人から生前一括贈与により取得した農地等で被相続人の死亡の時まで贈与税の納税猶予又は納期限の延長の特例の適用を受けていたもの
ホ.相続や遺贈によって財産を取得した人が相続開始の年に被相続人から生前一括贈与を受けていたもの


上記の要件のうち、特に注意が必要なのは「③特例用地等の要件」の、相続税の期限内申告書に記載があることという点です。


この申告書は、被相続人の死亡を知ってから10ヶ月以内に、被相続人の死亡時の住所がある税務署に提出しなければなりません。


すなわち、相続税の申告の際に納税猶予を受ける旨を申告しないと、納税猶予を受けることができないのです。


※2018/06/21 追記

なお、6月20日に全会一致で可決・成立した都市農地の賃借の円滑化に関する法律により生産緑地を賃借した場合でも納税猶予が受けられるようになりました。


(2)納税猶予の効果

納税猶予を受けると、農地の権利を移転する際に相続税・贈与税の納税が猶予されます。この猶予は譲受人が耕作を続ける限り続き、一定の要件を満たすと猶予が免除されます。


猶予されていた税額の納付が免除される場合は以下の3つです。


①特例の適用を受けた農業相続人が死亡した場合
②特例の適用を受けた農業相続人が特例農地等の全部を農業の後継者に生前一括贈与した場合 ※特定貸付けを行っていない相続人に限ります。
③特例の適用を受けた農業相続人が相続税の申告書の提出期限から農業を20年間継続した場合(市街化区域内農地等に対応する農地等納税猶予税額の部分に限ります。) ※特例農地等のうちに都市営農農地等を有しない相続人に限ります。また、生産緑地は対象になりません


(3)納税猶予の取消

納税猶予が適用されると相続税の納税が猶予されますが、一定の場合には納税猶予が取り消され、猶予されていた相続税に加え、利子として一定額を支払わなくてはならなくなります。納税猶予の取消の要件は以下の通りです。


イ.特例農地等について、譲渡等があった場合
ロ.特例農地等に係る農業経営を廃止した場合
ハ.継続届出書の提出がなかった場合
ニ.担保価値が減少したことなどにより、増担保又は担保の変更を求められた場合で、その求めに応じなかったとき
ホ.都市営農農地等について生産緑地法の規定による買取りの申出があった場合や都市計画の変更等により特例農地等が特定市街化区域農地等に該当することとなった場合
ヘ.特例の適用を受けている準農地について、申告期限後10年を経過する日までに農業の用に供していない場合

これらの場合は、農業の後継の奨励という農地の納税猶予の趣旨に反するため、農地であっても納税猶予が適用されなくなります。


農地は比較的税金が安いとはいえ、納税しなければならなくなった際の影響は大きくなります。特に、市街化区域内の農地については、宅地並みの課税がなされるうえに利子を付けて支払う必要があるため、多額の支払いが発生することになります。


納税猶予を受けている土地の管理には注意が必要になると言えます。


まとめ


今回の重要な点


①相続税は3000万+(600万円×人数)以上の財産の相続で問題になる
②農地の財産の評価の方法は農地の位置によって異なる
③相続人が農業を承継する場合は原則として納税猶予、ただし猶予を受けるには10か月以内の申告が必要


農地に関する相続税は複雑な点が多く、混乱する部分も多いかと思います。


しかし、10か月以内に相続の申告をしないと納税猶予などの優遇措置を受けることができなくなるため、相続が発生した場合は速やかな対応が必要になります。

相続が発生する前にきちんと対策をしておき、せっかくの財産をきちんとした形で残すことができるような工夫をしておきましょう。


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