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農業経営基盤強化促進法とは
目次
今回は、農業経営基盤強化促進法についてお話したいと思います。
農業経営基盤強化促進法(以下、「農経法」といいます。)は、
国民生活の安定・経済発展のためには、効率的かつ安定的な農業経営を確立することが重要であることにかんがみて、かかる農業経営を目指して意欲ある農業者に対する農用地の利用集積、
経営管理の合理化その他の農業経営基盤の強化を促進するための措置を総合的に講ずるために整備された法律です(農経法1条)。
本法の内容を簡単に言うとすれば、
「安心して農地を貸せる仕組み」と「効率的かつ安定的な農業経営を育成するための仕組み」
と言えるでしょう。
以下、農経法について概観していきます。
まず、都道府県あるいは市町村が、その地域の特性・条件等を考慮して、農経法に規定された各施策の具体的な基準や推進方法等を規定します。
各都道府県知事は、政令の定めるところにより、農業経営基盤の強化の促進に関する基本方針を定めます(農経法5条)。
その際、次のような事項を、当該地域の特性に即した形で定めることが規定されています。
① 農業経営基盤の強化の促進に関する基本的な方向 ② 効率的かつ安定的な農業経営の基本的指標 ③ 新たに農業経営を営もうとする青年等が目標とすべき農業経営の基本的指標 ④ 効率的かつ安定的な農業経営を営む者に対する農用地の利用の集積に関する目標 ⑤ 効率的かつ安定的な農業経営を育成するために必要な次に掲げる事項 イ 農業経営基盤強化促進事業の実施に関する基本的な事項 ロ 農地利用集積円滑化事業の実施に関する基本的な事項
市町村も、政令で定めるところにより、農業経営の基盤の強化の促進に関する基本的な構想を定めます(農経法6条)。
この基本構想においては 農業経営基盤の強化の促進に関する目標や営農の類型ごとの効率的かつ安定的な農業経営の指標、農用地の利用の集積に関する目標、農経法に定められた事業に関する事項等が定められます。
市町村が経営改善の意欲が高い農業者を育成すべき効率的かつ安定的な農業経営として認定したり、新たに農業を始める者に対しての認定をしたりする制度があり、それらの認定を受けることでのメリットがあります。
これは、経営の改善に取り組む農業者が、5年後の経営改善目標等を規定した経営改善計画を策定し、市町村に提出することで、当該農業経営改善計画が適当である旨の認定を受けることができる制度です(農経法12条)。
この計画には、次のような事項を記載する必要があります。
① 農業経営の現状 ② 農業経営の規模の拡大、生産方式の合理化、経営管理の合理化、農業従事の態様の改善等の農業経営の改善に関する目標 ③ 前号の目標を達成するためとるべき措置 ④ その他農林水産省令で定める事項
その認定の際、次の要件に該当すると認められることが必要です。
① 基本構想に照らし適切なものであること。 ② 農用地の効率的かつ総合的な利用を図るために適切なものであること。 ③ その他農林水産省令で定める基準に適合するものであること。
認定農業者となると、経営所得安定対策としての交付金や補助金の需給、
融資・税制・農業法人等からの出資の面での優遇、農業者年金の保険料支援などを受けることができるようになるメリットがあります。
これは、新たに農業を始める者が、就農後数年後の経営の目標を規定した青年等就農計画を作成し、市町村提出することで、当該青年等就農計画が適当である旨の認定を受けることができる制度です(農経法14条の4)。
この計画にも次のような事項を記載することが必要です。
① 農業経営の開始の時における農業経営の状況(既に農業経営を開始した青年等にあっては、農業経営の現状) ② 農業経営の開始から相当の期間を経過した時における農業経営に関する目標 ③ 前号の目標を達成するために必要な施設の設置、機械の購入その他の措置に関する事 項 ④ 第四条第二項第二号に掲げる者にあっては、その有する知識及び技能に関する事項 ⑤ その他農林水産省令で定める事項
そして、認定には、
①基本構想に照らし適切なものであること、
②その他農林水産省令で定める基準に適合するものであること
が必要です。
この青年等就農計画の認定を受け、認定新規就農者となると、青年等就農資金(無利子融資)、人材投資事業、担い手確保・経営強化支援事業、経営所得安定対策、認定新規就農者への農地集積の促進、農業者年金保険料の国庫補助等を受けることができるメリットがあります。
農地利用集積円滑化事業とは、効率的安定的な農業経営を営む者に対して、農用地の利用の集積の円滑化を図るために行われる一連の事業をいいます。
これは、市町村等が、委任・代理による仕組みにより行う事業です。
具体的には、次のようなものがあります。
①農地所有者代理事業:農地等の所有者から委任を受けて、その者を代理し、農地等について売渡しや貸付け等を行う事業 ②農地売買等事業:農地等の所有者から農地等の買入れや借入れを行い、その農地等の売渡しや貸付けを行う事業 ③研修等事業:農地売買等事業により一時的に保有する農地等を活用して、新規就農希望者に対して農業の技術、経営の方法等に関する実地研修を行う事業
それぞれの事業は、下記のものが主体となります。
農地所有者代理事業:
①市町村、農協、農業公社、営利を目的としない法人
②法人格を有しない非営利の団体(構成員を対象にする場合のみ)
農地売買等事業・研修等事業:市町村、農協、農業公社
この円滑化事業のメリットとしては、次のようなものがあります。
①農地の受け手は、通常は、多数の農地所有者と交渉する必要がありますが、農地利用集積円滑化団体と協議すればそれだけで規模拡大・面的集積を実現でき、煩雑な交渉作業を楽に行うことができます。
②私人による調整ではなく、公的機関による調整であることから、心理的抵抗感や軋轢を緩和することが可能となり、比較的スムーズに交渉に入ることになります。
③農地利用集積円滑化団体に情報等が集中するため、自ら受け手を探せない者が農地を放棄することが少なくなり、受け手を見つける可能性が大幅に広がります。
これは、農業者による団体が、農地利用の自主的な取り決めに基づき農地の利用調整を推進することを目的とする事業です。
この農業者による団体には、
①農用地利用改善団体:農用地利用改善団体とは、集落などの一定の地縁的なまとまりのある区域内の農用地の所有者・利用者等(農用地について権利を有する者の3分の2以上)で構成する団体。
②特定農業法人:担い手が不足する地域において、農用地利用改善団体の地区内の農用地の相当部分について、利用権の設定等若しくは農作業の委託を受けて農用地の利用集積を行う農業経営を行う法人
③特定農業団体:担い手が不足する地域において、農用地利用改善団体の地区内の農用地 の相当部分について、農作業の委託を受けて農用地の利用集積を行う団体(特定農業団体)を、当該法人又は団体の同意を得て、農用地利用規程に定める制度。
があります。集落としてのあるべき農業の方向について、合意形成を図った上で、農用地利用規程を定め、農作業の効率化や農地の利用関係の改善等の農用地利用改善事業を実施することが主な事業内容です。
これは、農業委員会が認定農業者等から経営規模拡大の申出があれば、それに応えるべく農用地の利用調整を実施するものです。
市町村は農業委員会の決定を経て利用権設定等の内容を含めた農用地利用集積計画を定めなければなりません(農経法18条)。
農用地利用集積計画には、利用権の設定等を受ける者の氏名又は名称及び住所、利用権の設定等を受ける土地の所在、地番、地目及び面積、設定又は移転を受ける利用権の種類、内容等の事項が記載される必要があります(農経法18条2項)。
そして、その計画は次の要件が認められる必要があります。
① 計画の内容が市町村基本構想に適合すること
② 利用権の設定等を受ける者が次のすべてに該当すること
ア 農用地のすべてを効率的に耕作すること
イ 農作業に常時従事すること
ウ 農作業に常時従事しないと認められる者については、アのほか次の要件のすべてを満たすこと
(ア) 地域の農業者との適切な役割分担の下に農業経営を行うこと
(イ) その者が法人である場合は、業務執行役員のうち一人以上の 者が耕作の事業に常時従事すること
※ 農用地利用集積計画に、農用地を適正に利用していない場合 には貸借を解除する旨の条件が定められている必要がある。
③ 利用権を設定する土地について関係権利者すべての同意を得ていること。
ただし、数人の共有に係る土地について利用権(存続期間が5年を超えないものに限る。)を設定する場合は、2分の1を超える共有持分 を有する者の同意を得ていること。
農用地利用集積計画の公告により、計画の定めるところによって利用権が設定され、若しくは移転し、又は所有権が移転します。
農用地利用集積計画の定めるところにより農用地の利用権の設定等が行われる場合には、
①権利移動の許可、②賃貸借の法定更新の規定
は適用されません。
以上のような諸制度を用いることで、農業経営をするにあたり多くのメリットを享受することができます。是非とも今後の活用を検討されてみてはいかがでしょうか。
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