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地目変更の流れ -農地転用の流れや手続き、期間(3/3)
前編では農地の種類と市街化区域内の農地の転用手続きについて、中編では市街化区域外の一般の農地について書いてきました。
この後編では、市街化区域外の農振地域の農地の転用手続きと、農地転用が終了した後の地目変更登記について見ていきたいと思います。
農振地域は、正式には農業振興地域といい、諸条件を考慮して総合的に農業の振興を図ることが必要であると認められる地域について、その整備を計画的に進めていくことを目的として設けられた制度です。
農林水産大臣の定めた基本方針に基づき都道府県知事が農業振興地域を指定すると、指定を受けた市町村は、知事と協議して農業振興地域整備計画を定めます。
この計画によって農用地等として利用すべき区域(農用地区域)など、地域の農業の振興についての計画が定められます。そして、この計画が農地転用の可否に大きな影響を与えます。
農振地域の中でも農用地区域でない農地については(3)の一般の農地と同様の手続きで農地を転用することができます。一方、農業振興地域整備計画によって農用地区域に指定された農地は、原則として転用することができません。
そのため、農用地区域に指定された農地を転用する場合は農業振興地域整備計画を変更し農用地区域から当該土地を農用地区域から除外する手続きが必要になります。
農用地区域からの除外の要件は、
①農用地区域以外に代替すべき土地がないこと ② 除外により、土地の農業上の効率的かつ総合的な利用に支障を及ぼすおそれがないこと ③ 効率的かつ安定的な農業経営を営む者に対する農地の利用の集積に支障を及ぼすおそれがないこと ④ 除外により農用地区域内の土地改良施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがないこと ⑤ 農業基盤整備事業完了後8年を経過しているものであること
とかなり厳しい要件が設定されています。
この5つの要件を満たしており、転用がやむを得ない場合は、市町村長に対し農用地利用計画の変更の申出をすることができます。
このように除外の要件が厳しいのは、農用地区域はその土地が農業の振興に必要な土地であることから極力転用させないようにしたいという立法者の意志があるためです。
この申出を受けた市町村は、意見聴取・調整を行ったうえで計画の変更案と理由書を作成します。その後市町村は変更案と理由書を公告し、おおむね30日間住民が閲覧できる状態におき、15日間異議申立てを受け付けます。
この間に異議申立てがなければ農用地利用計画が変更され、当該農地が農用地区域から除外されます。この手続きを経ると、2.(3)の一般の農地と同様の手続きと要件で適法に農地を転用することができます。
農用地区域からの除外手続きにかかる期間は半年から1年とされています。
これほどに期間がかかる理由は、計画の変更には行政内部で多くの関係部署との調整が必要になること、そもそも計画変更が半年に一回ほどしか行われないことがあります。
農地転用のためには、当該農地が農用地区域から除外された後に改めて2.(3)の農地転用手続を行わなければならないため、実際に農地を適法に転用することができるようになるには、さらに1~2か月かかります。
除外の申出に必要な書類は各市町村や除外の目的によって異なりますが、除外申出書や登記簿謄本、公図、事業計画書などが必要とされることが多いです。
農地の転用の許可を得て転用のための工事が終了したら、登記の地目変更をしましょう。
地目とは、登記簿に登録された土地の種類のことを言います。地目は地番で区切られたそれぞれの土地すべてに登録されています(不動産登記法34条3項)。
農地とされていた土地は、田や畑といった地目になっていますが、農地の転用手続きをして工事が行われると、その土地は農地でなくなってしまうため、現実に合わせて登記の地目も変更する必要があります。この手続きは地目が変更されてから1ヶ月以内に行うこととされています。
農地を転用する際の地目変更登記申請に必要な書類は以下の通りです。
①地目変更登記申請書 法務局のホームページから、申請書の様式をダウンロードすることができます。用紙はA4サイズで、上質紙が望ましいとされます。 ②土地の案内図 地目を変更したい土地の場所がわかるようにした地図を添付します。住宅地図を用いることが多いとされています。 ③農地転用許可証などの農地関連書類 農地についての地目変更登記の場合は、2.で得た農地転用許可証・転用届受理の通知もしくは非農地通知書を添付します。 非農地通知書は当該土地のある農業委員会から送付されます。この通知書は農業委員会の調査と議決によって発出されるものであり、申請しなくても農業委員会が当該土地は農地でないと判断すれば非農地通知書は送付されます。 ただし、この調査は順次の発送であるため、転用による地目変更登記のために非農地通知書を必要とする場合は、非農地通知申出書を農業委員会に提出することになります。 ④その他 その他申請者の事情により住民票など身分を証明する書類が必要になる場合もあります。
書類がそろったらいよいよ登記申請をします。登記申請の方法には窓口での申請と郵送による申請の二つがあります。
法務局の窓口で申請する際は、①~④の書類と印鑑を持参して提出します。
提出前には法務局で登記の必要書類などについて確認・相談することもできます。法務局には相談について事前予約制をとっているところもありますので、直接の相談を希望する際には事前に法務局に連絡をとるなどしておきましょう。
書類を提出する際は、登記の処理が終了する日の目安と処理が終了した際に連絡があるかを確認しましょう。登記の処理が終了したことを確認したら、窓口で登記済証を受け取りに行きます。
郵送で申請する際は、必要書類をコピーした後で、①登記申請書を一番上にし、その次に②案内図、③農地転用許可証などを最後にして重ねてホチキス止めします。④その他の証明書類はホチキス止めせず、原本に「原本還付」という付箋を付けて①~③と同じ封筒に入れます。
また、返信用封筒に切手を貼って同封し、封筒の表には宛名のほか「不動産登記申請書在中」と記載します。
送付前には、法務局に電話をかけて書類に不備がないかを確認しておくといいでしょう。
送付する際は、必ず書留郵便で送るようにしてください。郵送した書類にミスがなければ、登記についての事務処理が終了すると法務局から登記済証が郵送されます。
これらの処理にかかる期間は、1週間から2週間とされています。非農地証明書が発行された時期は窓口が混雑しやすいので、この時期の登記申請や相談は早めに予約をとることをおすすめします。
以上が農地転用にかかる手続きの詳細です。
農地の種類により手続きの内容が大きく変わるため、前編、中編、後編と3回に渡って詳細を解説してまいりましたが、ここまでの内容を読むと、転用に関する手続きには難しく時間がかかるものが多い、という印象をお持ちになる方も多いかと思います。
ただし、収益性向上や管理の容易さといった点では転用のメリットが大きいことも事実です。
転用により得られるメリットと、転用に伴う金銭的・時間的コストをよく比較し、最終的にどのような形で土地を活用していくのが自身にとって最良かということをよく考えて判断することが重要です。
最後に、上記のような手続きを経て農地を転用するのではなく、農地のまま活用する方法として、貸し農園や体験農園の開設も選択肢の一つにあります。
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